鹿児島県内では、桜島の噴火による降灰で住宅被害が年々増加傾向にあります。
そのため鹿児島県は住宅業者に向けて、「克灰住宅設計マニュアル」を作成し発表しています。
克灰住宅の指針は大きく分けて3つあり、3つの方針に従うことで補助金を受けることも可能です。
鹿児島県/克灰住宅設計マニュアル (pref.kagoshima.jp)
今回は克灰住宅を知るために、克灰住宅の持つ役割や、克灰住宅に認定されるための具体的な対策について、一緒に見ていきましょう。
克灰住宅とは?
克灰住宅とは、鹿児島県特有の住宅の取り組みで、桜島の火山灰に負けない家づくりを目指したものです。
また、克灰住宅を建築するうえで、鹿児島県では以下の5つの考え方を公表しています。
[克灰住宅設計の5つの考え方]
- 灰の侵入を防ぐ。
- 灰のたまりにくい構造・形式にする。
- たまった灰を除去しやすくする。
- 灰に影響されない空間をつくる。
- 灰にめげない演出をする。
5つの考え方に沿った克灰住宅を目指すことで、火山灰の影響を最小限にしつつ、鹿児島県特有の火山灰と共存していこうという目的があります。
降灰が住宅に与える影響とは?
鹿児島県で家づくりを検討している方は、活火山である桜島の影響を考え、噴火時の降灰リスクを知っておく必要があります。
そこでここでは、噴火により降り注ぐ灰が住宅に与える影響について、お話をしていきます。
屋根や雨樋の破損
桜島で発生した火山灰は、鹿児島市を中心に降り注ぎます。
市街地に届く火山灰はほとんどが灰色の粉のような状態であるため、火山灰だけ見ると、そこまで住宅に大きな影響を与えないようにも思えます。
しかし火山灰が数センチ積もると、重さにより住宅の屋根や雨樋などが破損する可能性があります。
さらに火山灰が積もっている場所に雨が降ってしまうと、火山灰が雨で重くなり、屋根が倒壊するなどの危険もあります。
住宅設備の機能低下や故障
火山灰は、窓やエアコンの室外機、通気口などから住宅のなかにも入り込みます。
そうして起きるのが、住宅設備の機能低下や故障です。
特に影響を受けるのがエアコンや空気清浄機で、火山灰が内部に入り込むことにより、フィルターの目詰まりを起こして機能が低下してしまいます。
そのまま放置することで、住宅設備の故障につながることもあります。
また住宅のなかに火山灰が入り込むことで、呼吸器障害や眼球の痛みなど、健康被害に影響が出る可能性もあります。
克灰住宅にするための具体的な対策とは?
鹿児島県外にお住まいの方は「噴火なんて滅多にないことなのではないか?」と思われるかもしれません。
しかし桜島では、年に何回もの噴火が起こるのが常で、今年(令和6年)に入ってから1月31日までの段階で既に2回の噴火が観測されています。
ちなみに、令和に入ってから最も噴火回数が多かった年は令和1年の228回です。いかに桜島の噴火や噴火による降灰被害が身近であることが分かりますね。
そこで、桜島の噴火による降灰被害から住宅を守るために考えられたのが「克灰住宅」というわけです。
では、どのような条件を満たせば克灰住宅になるのか、克灰住宅にするための具体的な対策についてみていきましょう。
窓からの火山灰の侵入や蓄積を防ぐ
まずはひとつめとして、火山灰が窓から侵入したり、網戸に蓄積することを防ぐ工夫が求められています。
火山灰はとても小さな粒子であるため、窓の隙間や網戸に蓄積されやすく、通風によって室内に入り込んでしまうことがあります。
そのため克灰住宅では、窓から入り込む火山灰への対策を強化するため、具体的に以下の対策を行うよう推奨しています。
[克灰住宅にするための具体的対策の例]
- 窓を気密性の高いサッシや、二重サッシにする。
- 火山灰付着防止のため、網戸は室内側に設置する。
- 外付きサッシを採用し、ひさしは急勾配にする。
屋根に火山灰が蓄積するのを防ぐ
屋根に火山灰が蓄積することで、屋根や雨樋の破損や倒壊することを防ぐために、屋根に火山灰が蓄積しにくくする工夫が必要です。
そこで克灰住宅では、屋根の勾配や形状について、具体的に以下の対策を行うよう推奨しています。
[克灰住宅にするための具体的対策の例]
- 屋根の形は単純にし、谷になる形状は避ける。
- 屋根勾配は4/10以上にする。
- 軒の出は60㎝以上にし、パラペットの立ち上げは少なくする。
蓄積した火山灰を片付けやすくする
火山灰が屋根に蓄積されにくい工夫をしていても、やはり灰は積もってしまうものです。
放置することで重みを増すこともあるため、屋根の形状に気を付けたから大丈夫、というわけでもありません。
そのため火山灰が積もった時にすぐに取り除けるよう、樋や軒の勾配を急勾配にしたり、屋根に灰シェルターをつけることを推奨されています。
また灰シューターは、屋根に登ることなく自動で屋根の灰を集めてくれるため、降灰後の手間を減らしてくれます。
[克灰住宅にするための具体的対策の例]
- 灰シューターパイプを設ける。
- 灰シューターからトラックに火山灰を積みやすくする。
- 樋や軒の勾配を増加させ、火山灰を集めやすくする。
克灰住宅にするためには他の対策も必要
上記では、窓や屋根、蓄積した灰の収集を例にあげて鹿児島県が公表している克灰住宅にするための具体的な対策について解説をしてきました。
しかし実際には、基礎や床下、外構など数多くの対策が必要になります。
降灰中は洗濯などにも不便が発生するため、サンルームの設置や浴室乾燥機の設置などについても検討する必要があります。
どんな対策が必要かはプロの業者に相談する
家を建てたいと検討している土地が、桜島に対してどの方向にあるのか、また洗濯を外干しにするか室内干しするかなどによって、克灰住宅の設計が変わってきます。
鹿児島県で家づくりを検討している方は、まずは克灰住宅に強い鹿児島県内の業者に相談するようにしましょう。
本記事で紹介した具体的な対策以外にも、行うべき対策がある場合は、教えてもらうことができます。
克灰住宅にすることで補助金の対象になる
克灰住宅の建築は、「地域型住宅ブランド化事業」に該当するため、国から最大120万円の支援を受けることができます。
内訳は、克灰住宅の建築で100万円+地域材の使用で更に20万円、合計120万円となっています。
国からの補助金を受け取るためには、プロの業者の協力が必ず必要になります。
ただしどの業者でもいいというわけではありません。
国に認められた民間業者のみ適応となるため、補助金の活用を検討している方は、まずは県内の注文住宅の相談窓口を活用してみましょう。
まとめ
今回は、克灰住宅として認められるための条件や、具体的な対策について解説をしてきました。
克灰住宅は家の寿命を長く保ち、住む人にとっても住みやすい住宅を目指しているものです。
鹿児島県で家づくりを検討している方は、ぜひ克灰住宅の建築も検討してみてくださいね。
また最後に触れた克灰住宅の補助金については、今後のコラムで更に詳しく解説をしていきますので、克灰住宅を検討している方はぜひ今後もコラムをチェックしてください。